青山氏に依頼した想い
「ひいらぎ」は平成15年に一般住宅をお借りして、1ユニット定員9名でスタートしました。
もともと民家であっただけに家庭的な雰囲気で、利用者さんもなじみやすく、落ち着いた生活を送ることができました。
しかし、(1)定員が少なく、入居を希望されても待機期間が長いこと、(2)居室が2階にあり、万が一の災害時、避難誘導に不安があること、から移転増床を決めました。
設計にあたり、「ひいらぎ」にお母様が入居されていて、「ひいらぎ」の生活をよくわかってくださっている設計士の青山豊和さんに依頼し、(1)家庭的な雰囲気(2)利用者さんが主体的に生活を楽しめる空間を設計のコンセプトとしました。
建築士の想い
「グループホームひいらぎ」は2ユニット、計18人の認知症高齢者の方が共同生活をする場として半田市有脇町、半田中央病院の隣に計画されました。
開放性の高い敷地周辺の環境の中で、落ち着きのある住まいとなるように設計した木造平屋建です。
大きな建物でありながらも居住される方にとって「我が家」の感覚を抱けるように玄関の軒は低く抑え、外部との接点となる玄関周りは、木の格子で和らげています。
屋外空間を生活の中に取り入れることができるように建物の中心に中庭を配置し、建物廻りの庭も建物の中に引き込むように計画しています。 中庭は外部から安全な屋外空間であり、職員の目も届くため、居住者は自由に出入りできます。花に水をやったり、洗濯物を干したり、お茶を飲んだり、時には食事をしたりと、日々の暮らしに潤いを与える大切な場所です。また、ふたつのユニットのLDKの間に位置し、お互いのユニットに暮らす人たちのクッション的な役割も果たしてします。
東と西の庭はゴミ出し等のサービスの動線として活用しながら、外からの風や光をLDKに導く場所です。そして、南には家庭菜園として利用される南庭があり、洗濯室を通じて中庭ともつながっています。年々多くの緑が建物の廻りを囲んでゆく予定です。
居住者の個室は1箇所にまとめてしまうのではなく、ゾーンに分けて配置しています。LDKから自分の部屋まで感覚的に知覚できるように、またそれぞれの個室が特別な場所になるように考えています。
室内外には、出来る限り自然の素材を使用して、昔ながらの住まいの感覚を残しました。
この建物ただひとつの和室である多目的室は、雛人形等、季節の飾り物を楽しむ部屋であり、地域の方たちとの接点の場所でもあります。
地域の方たちとの交流を深めながら、時を経る毎に建物として落ち着きが深まっていくように、周囲の環境に馴染みながら、居住される人とともにゆっくりと歳を積み重ねていくような終の棲家であって欲しいと想っています。